気が遠くなるような話だが、自分を痛めつけ、苦労すればするほど、来世は極楽浄土に一歩でも近づけると信じているからにほかならない。
そういえばラサとはチベヅト語で、「極楽浄土」を意味している。
私も倣って横で五体投地礼をしようと思ったが、石畳の上ではとてもかなわないし、にわか信者では申し訳ない。
そこでお祈りの順序と経文を覚え、宿舎に帰ると、部屋のじゅうたんの上で、思いきって五体投地礼を実演してみた。
見事、鼻先とおでこをすりむき、血がにじんだのは恥ずかしい限りだ。
紅山の断崖の上に厳然とそびえ立つポタラ宮殿は、チベット最大の建築物で13層、高さ178メートル、東西が420メートル、南北の幅が300メートルもある。
ジョカン寺と同じく7世紀に、ソンッェンガンポ王が唐とネパールから迎える妻のために造営したもの。
その後の内乱などでほとんどが破壊され、17世紀になってD・R5世が、現在の姿に再建した。
チョコレート色と白い壁面のコントラストが美しい。
ポタラ宮は最高権力者だった歴代D・Rの居城であり、政治活動や宗教活動をする場でもあったが、D・R14世は現在インドのダラムサラに亡命中だから、「主なき城」となっている。
裏道から車で上部まで案内され、僧の先導でなかに入ったが、真っ暗で何も見えない。
懐中電灯で足元を照らしながら進むと、灯明の明かりに黄金の仏像がいくつも浮かび上がってきた。
そのそばには経典がうずたかく積まれている。
これこそKが探し求めてきたサンスクリット語の仏教経典である。
目が慣れるにつれて、堂内の様子がわかり始め、仏像、塁茶羅、経典、財宝などの多さに圧倒された。
大きな黄金の仏像が所どころの霊塔のなかにまつられているが、これは歴代D・Rの墓所で、黄金の仏像のなかに遺体が安置されていると聞いて驚く。
この霊塔の屋根は金箔を張りめぐらし、ポタラ宮の屋上に突き出ている。
歴代D・Rが死ぬと、遺体を塩漬けにして土で固め、その上に金箔を張って黄金の仏像にする。
これを塔葬といって、D・Rに限られた最高の葬儀ということだ。
特に徳の高かった5世の仏像が最大で、高さが約15メートルもある。
いくつかの部屋を見学して屋上に出た。
実はこの日、活仏との面会が特に許され、私たちは接待所に入って待つことになった。
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